2chまゆりスレ2 96
「……!! ……っ!!」
ラボへの階段を上っていると、部屋の中から何か叫び声がドア越しに聞こえてきた。
ダルはまだ大学に居るはずだから、今日のラボは学校から帰ってきたまゆり一人のはずだ。あいつはそうそう大声を出したりしないが、何があったんだ?
不審に思いながらドアノブに手をかけた俺に、こんどは室内からの声がはっきり聞こえてきた。
「嫌っ!! やめて……きゃあっ!!」
若い女性の悲鳴。
あの夏の日々の中で、何度も何度も聞いた、あの悲鳴。
「まゆり!!」
ドアを蹴り開けて室内に転がり込む。まさかこの世界線でもSERNが? ここならまゆりは死なずに済むんじゃなかったのか?
俺は紅莉栖を犠牲にして、まゆりを選んでこのβ世界線に来たんだ。何があろうと、お前を絶対に守ってやる……!!
襲撃者の姿を求めて室内を見回す。だが、そこにあるのはいつもの人気の無いラボの風景だ。
「あっ…… はぁっ……!!」
開発室の方からは相変わらずの声が聞こえる。よくよく考えてみると、これはまゆりの声とは少し違うような……
不審に思いながら開発室に入ってみれば、ダルのPCの前で画面を見ながら固まっているまゆり。
「はぁ、はぁ…… あん…… だめぇっ!!」
そして、いつしか悲鳴は艶めかしい喘ぎ声に変わっていた。
「あのね、ダルくんのパソコンでネットを見てたの。それでね、スタートメニューにキラリちゃんのアイコンがあったからクリックしてみたらゲームが始まってね、雷ネットのゲームなんてあったんだー、って思いながらクリックしてたらこんな風になっちゃったの……」
まゆりの要領を得ない説明を聞いて納得する。おおかた雷ネットのキラリ陵辱ものの同人ゲーか何かだろう。
あのHENTAIめ…… なんてものをインストールしてるんだ……!!
まゆりの肩越しに画面をのぞき込む。ウィンドウの中ではいたいけな少女が複数の男たちに犯されながらよがり声を上げていた。
「もういい、まゆり。お前にはこういうのは早すぎる」
マウスを取り上げ、ゲームを強制終了する。
音声が途切れたとたん、さっきまでが嘘のような静寂が俺達を包んだ。
椅子に座ってうつむくまゆりの表情は見えない。いきなりこんな物を見せられて、トラウマになっていないといいんだが。
「あのね、オカリン……」
「ん、どうした? まゆりよ」
まゆりの呼びかけに、できるだけ普段通りに応えてやる。こんなときは何もなかったように接してやるのが一番のはずだ。
「まゆしぃは、オカリンの人質から、恋人にクラスチェンジしたんだよね……?」
「あ、ああ」
なぜ今それを訊く?! 混乱する俺の手に、まゆりの手が重なる。
椅子に座るまゆりに覆い被さるようにしてPCを操作していたので、思った以上に身体が密着していることに今さら気付く。
すぐ近くのまゆりの髪の毛からはリンスの香りがした。誘われるように下を見れば、開いた服の胸元から胸の谷間と下着が見えた。
「まゆしぃはね、オカリンがしたかったら……」
まゆりが俺の手をきつく握る。振り向いたその顔は、お互いの吐息が判るくらい近い。
俺が初めて見るような、濡れた瞳でまゆりが囁く。
「さっきのゲームみたいなこと、いつでもして良いと思ってるんだよ……?」